発行番号:48
文 責:嶋貫賢男
*下記はTSURUGI SOLUTIONが独自に作成した抄訳・要約・解説です、正確な全文は原典をご参照下さい。原典は各リンクからダウンロードできます。
1.信託制度の税制(2025年3月12日 経済財務省令192号)
本省令は、信託制度を利用して信託会社等に財産を管理してもらう場合の税務を定めたものです。信託制度とは、ある者(委託者)が所有する財産(土地など)を、信託会社等に管理してもらう制度です。委託者が自分で財産を管理することが困難である場合や、将来自分が高齢になって財産管理する能力が衰えるときに備えておきたい場合などに利用される制度です。
なお、カンボジアでは外国人は土地の所有権を持つことができませんが、信託財産の所有権は信託会社に移転しますので、カンボジアで外国人が土地を保有するための制度としても利用することができます。
カンボジアで信託制度の利用が広まったのはここ数年で、税務上明確でない点があったため、これを明確にすることが本省令の目的です。
・信託会社の課税所得となるのは、信託財産を管理・運用する対価として取得する手数料のみであり、信託財産の運用から発生する収益は含まない。例えば、信託財産である不動産を賃貸して得られる賃料は、信託会社が賃貸人として受け取る金銭であるものの、信託会社の所得にはならない。
・信託財産である不動産を賃貸して得られる賃料に対して課税される賃料税や、信託財産を譲渡したときに生じる利益に対して課税されるキャピタルゲイン税は、信託会社が税務当局に申告する必要がある。
本指導は、事業所得税課税前の利益を株主に配当した場合に課税される前払い配当税をオンラインで申告できるシステムが導入されたためこれを利用して税務申告をするよう指導するものです。
4.不動産業ライセンスの更新・変更のオンライン申請(2025年6月12日 不動産及び質業規制当局通知)
本通知は不動産業ライセンスの更新・変更申請が、http://realestate-service-business.rpr.gov.kh
からオンラインでできるようになったことを通知するものです。
5.資本剰余金には課税されない旨(2025年6月17日 経済財務省指導 18574号)
会社が新株発行により増資するとき、新株を引き受ける者が株式の額面価格よりも高い金額で引き受けることがあります。この場合の額面価格を上回る部分は会社の利益として法人税が課税されるのではないかという疑問が提起されていたため、本指導は、額面価格を上回る部分は資本剰余金として資本となるものであり、利益ではないから法人税は課税されないことを明確にしました。ただし、会社への入金が資本剰余金であることを証明できる文書を揃えておかないと、課税所得とみなして法人税を課税するとも書かれています。
6.会社が取締役に対して支払う報酬に対する課税(2025年6月20日 税務総局指導 19116号)
会社が取締役に支払う報酬については、役員報酬として課税される場合と、給与として課税される場合があり、いずれも税率と納税方法が異なるため、判断が難しい場合があります。本指導は、役員報酬としての課税となる場合と給与としての課税となる場合の基準を示すものです。
下記要件のうち2つ以上を満たす場合は、その取締役は労働者とみなされ、報酬に対しては給与税が課されます。
・定められた場所で定められた仕事をすれば必ず所定の報酬を受け取ることができる
・仕事をする場所と時間を自分で決めることができない
・仕事に使用する器具を購入する資金を支出する必要がない
・同時に複数の事業者のために仕事をしていない
労働者とみなされて給与税が課税される場合、その取締役がカンボジア居住者である場合は、海外で受け取る給与も含めてカンボジアの給与税が課税されるが、その取締役がカンボジア非居住者である場合は、カンボジア源泉の給与に対してのみカンボジアの給与税が課される。
取締役が労働者とみなされない場合は、会社に対してカンボジア国内で提供したサービスに対して支払われる報酬(無報酬である場合は提供したサービスの価値)について源泉徴収税が課税され、税率はカンボジア非居住者であれば14%、カンボジア居住者であれば15%となる。
7.2026年の縫製製靴業の最低賃金の確定(2025年9月17日 労働職業訓練省 214号)
本省令は、縫製製靴業の2026年の最低賃金を1か月210ドルと規定するものです。2025年の最低賃金である208ドルから2ドルの上昇となりました。賃金と別に支給されていた諸手当(交通費等)は減額せずに据え置くこととされています。また、試用期間中の労働者の最低賃金は208ドルとされています。新最低賃金は2026年1月1日から適用されます。
8.2026年の労働者の有給祝祭日(2025年9月18日 労働職業訓練省令 014号)
本省令は、企業が労働者に対して有給で休暇を与えなければならない2026年の祝祭日を規定するものです。
1月1日 (木) 新年
1月7日 (水) 虐殺政権からの解放日
3月8日 (日) 国際女性の日
4月14日 (火)‐16日(木) クメール正月
5月1日 (金) 仏誕節・ピサク ボチェア セレモニー
5月5日 (火) 王室始耕祭
5月14日 (木) シハモニ国王誕生日
6月18日 (木) モニク前王妃誕生日
9月24日 (火) 憲法記念日
10月10日 (土)‐12日(月) プチュンバン
10月15日 (木) シハヌーク前国王記念日
10月29日 (木) シハモニ国王即位記念日
11月9日 (月) 独立記念日
11月23日 (月)‐25日(水) 水祭り
12月29日 (火) 平和の日(新祝日)
全ての労働者が一斉に休みを取ると公共への支障が生じる場合又は企業活動が損失を受ける場合は、各労働者を交代で休ませる方法を実践するよう指導されています。また、使用者と労働者の間に合意がある場合、または就業規則又は労働協約に規定がある場合は、上記の休日を労働日として別の時期に休日をとらせることも可能である旨が記載されています。この場合、労務監査官がチェックにきた場合に備えて交代で勤務するスタッフのリストを作成して保管するよう指導されています。労働者を交代で休ませる期間は、休みを取る労働者の交代要員として別の労働者を一時的に使用することができるとされています。
9.オンライン商標登録システムの開始(2025年9月25日 商業省通知 3210号)
本通知は、2025年9月30日から紙を使用せず全てデジタルで商標登録(Trademark Registration)ができるシステムが開始する旨を通知するものです。
10.出産休暇中の女性労働者に支払う給与への給与税(2025年10月14日 経済財務省指導 014号)
本指導は、出産休暇を取得する女性労働者に対して休暇中の給与を事前にまとめて前払いした場合でも、給与税は休暇中も毎月申告すべきであり、給与を前払いしたときにまとめて給与税を申告するものではないという税務申告実務を確認するものです。
11.製品登録申請の優遇(2025年10月27日 産業科学技術イノベーション省通知 3775号)
産業科学技術イノベーション省は、製品製造業者と製品輸入業者に対して、2025年10月27日から2025年12月31日まで製品登録(ច.ប.ផ)申請の優遇措置を実施します。
- 国産製造した製品の登録に必要な書面(コピー)
- 事業登録証(パテント証)と工場・企業・手工業の新規登録証明書
- CS001-2000に沿ったマーク(カラーコピー)
- 商品分析証(発行日から6か月以内)
- 輸入した製品の登録に必要な書面(コピー)
- 事業登録証(パテント証)と工場・企業・手工業の新規登録証明書
- CS001-2000に沿ったマーク(カラーコピー)
- 商品認証書または商品分析証(発行日から6か月以内)
- 独占輸入販売証明書または品質保証証
- 公共サービス手数料
申請手数料は1つの商品につき200.000リエル(約50米ドル)であるが、まとめて申請する場合は以下のとおり割引とする。
- 5以上19までの製品を同時申請:10%割引
- 20以上49までの製品の同時申請:15%割引
- 50以上の製品を同時申請:20%の割引
12.キャピタルゲイン税適用の延期(2025年10月30日 税務総局通知 34236号)
本通知は、6種の資産(不動産、リース、株式等の投資資産、のれん、知的財産、外貨)全てにつきキャピタルゲイン税の適用を2026年1月1日まで延期する旨を通知するものです。キャピタルゲイン税の詳細は2025年7月18日付のキャピタルゲイン税に関する省令で示され、同省令では不動産については2026年1月1日から、不動産以外の資産については2025年9月から適用開始すると定められていたところ、全ての資産について部資産については適用を2026年1月1日まで延期するものです。

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