発行番号:10
文 責:嶋貫賢男
*下記はTSURUGI SOLUTIONが独自に作成した抄訳・要約・解説です、正確な全文は原典をご参照下さい。原典は各リンクからダウンロードできます。
2. 旅客運送事業に適用されるCOVID-19第2波防止措置(2020年6月25日 公共事業運輸省指導 034号)
本指導は、旅客運送事業者及び乗客が実施しなければならないCOVID-19第2波防止措置を定めたものです。概要は以下の通り。
- 顧客に対してサービスを提供する場所、特にチケット売り場、待機所、食堂、洗面所などでは、ソーシャルディスタンスを保ち頻繁に清掃すること。
- 運転手及び乗員の健康診断を定期的に実施し、勤務時間内はマスクを着用させること。健康不調の疑いがある場合は体調チェックのため一時的に休ませること。
- 搭乗者に対して乗車前に体温測定をし、アルコールで手洗いをさせること。
- 搭乗者に体温37.2超、咳、のどの痛み、呼吸困難などの症状がみられる場合は乗車させず、最寄りの健康センターへ行かせるか、または保健省のホットライン115番まで連絡すること。
- ハンドル、アームレスト、座席などの搭乗者が頻繁に触れる部分はアルコールまたは殺菌液を使用してできるだけ頻繁に清掃すること。
- 全ての搭乗者に対して、どこかを触った後や食事前後の頻繁な手洗い、咳やくしゃみをする際のマスクまたはクロマーの使用など、COVID-19防止措置を周知し実施させること。
3.信用情報の共有(2020年6月26日 国立銀行プラカス 352号)
本プラカスは、カンボジアで信用情報機関を営業する際の規制を定めたものです。カンボジアで信用情報機関を営業するためには国立銀行(NBC)からライセンスを取得する必要があり、NBCは申請書と添付資料を全て受理してから90日以内にライセンスの付与または拒否を通知するとされています。信用情報機関には、借入申込時の顧客の信用評価、NBCが金融機関を監査する際のサポート、返済遅延時のリスク調査等の役割が想定されています。
本法律は、核兵器・化学兵器・生物兵器などの大量破壊兵器への資金提供となる行為の防止を定めた法律です。国連安全保障理事会の決定によりリストに掲載された者・組織につき、カンボジアの外務国際協力省は司法省を通じて裁判所の資産凍結決定を得ることとされています。また、司法大臣は検察官に対して、特定の者・組織のリスト掲載措置及び資産凍結措置を求めるよう指示することができるとされています。資産凍結措置は当事者への事前通知なしに実施するとされています。
リストに掲載された者・組織に対して資産を移転したり財産上の便宜を図ることは禁止され、違反者には7年から15年の収監及び50百万リエルから200百万リエルの罰金の対象となるとされています。
本法に従って資産凍結措置を採った者は3日以内の報告が義務付けられており、報告先は本法11条所定の報告者(金融機関など)はカンボジア金融調査ユニット、その他の者は司法省とされています。また、リスト掲載者への資産移転要求を受けた者も、そのような要求があったことを報告する義務を負います。
5.刑事共助法(2020年6月27日 法律 020号)
本法律は、刑事手続に関してカンボジアと他国の国際協力を定めたものです。他国からなされた共助要請はカンボジア司法省が審査し、要請国がカンボジアからの要請に対して与えるであろう支援と同程度の支援を提供するという相互保証原則に基づき支援の有無・程度を判断します。本法律には、カンボジア当局が他国から証拠物収集の要請、公的機関が管理する書類・情報提供の要請、裁判書類提供の要請、身柄拘束されている者を証言や捜査協力のために一時的に引渡すことを求める要請、人捜索の要請、資産凍結・資産没収の要請などを受けた場合の手続・要件が詳細に定められています。
6.マネーロンダリング及びテロ資金供与防止法(2020年6月27日 法律 021号)
本法律は、マネーロンダリング及びテロ資金供与を防止するため、銀行、保険会社・マイクロファイナンス・リース会社・投資会社・両替業者・送金業者などの金融関連企業、信託業者、不動産開発業者、宝石業者、一定の業務に関与する弁護士・公証人・会計士・投資アドバイザー等、カジノなどの特定の事業者に対して、顧客の本人確認義務や、疑義のある取引をカンボジア金融調査ユニットへ報告する義務などを課すものです。
7.労働法に基づく「損害賠償」及び「事前通知に代わる補償」の解釈(2020年6月29日 労働職業訓練省レター 295号)
労働法は、使用者側から一方的に雇用契約を終了させる場合の「損害賠償」(正当理由ない解雇の場合)及び「事前通知に代わる補償」(法定期間の事前通知を実施しなかった場合に使用者が支払わなければならない補償金)の支払義務を規定していますが、本レターはCOVID-19の影響で雇用契約を終了させる場合の「損害賠償」及び「事前通知に代わる補償」の適用について下記の通り指針を示したものです。
まず、労働法71条は経済的・物質的・その他の困難に直面して操業停止(2か月間を超えない期間)に至った企業は、労働監査官の監視下で合法的に雇用契約を停止できるとされています。そして、COVID-19の影響で購入取消・納品延期・代金不払等が発生し困難に直面した縫製製靴業が労働法71条所定の雇用契約停止を実施した後に雇用契約を終了させる場合は正当理由のある解雇と解釈し、労働法91条の損害賠償は適用されないと示しました。ただし、事前通知の要件は適用されます。
また、労働法87条は、企業が事業を閉鎖する場合で一定の要件を満たすケースでは、使用者は労働法91条の損害賠償と事前通知に代わる補償の支払義務を免れるとされています。そして、COVID-19の影響で事業継続が困難となり、かつ雇用契約停止・終了などの諸々の手を尽くしても事業閉鎖を免れなかった場合は、損害賠償及び事前通知に代わる補償の支払義務を免れるケースに該当すると示しました。
8.住居簿及び家族簿の管轄移転(2020年7月1日 内務省令 2884号)
本省令は、住居簿(Residency Book)や家族簿(Family Book)に関する手続を居住地付近で行えるようにするため、行政権限を移転するものです。これまで市(Krong)・郡(Srok)・区(Khan)警察庁が管轄していた住居簿は町(Khum)・地区(Sangkat)警察局の管轄へ、これまで首都・州(Khaet)の警察委員会が管轄していた家族簿は市(Krong)・群(Srok)・区(Khan)警察庁の管轄へ移転されました。
9.登録所有者を発見できない車両の所有権移転登録の適用延長(2020年7月2日 公共事業交通省指導 035号)
公共事業交通省は2020年3月22日付指導006号により、登録所有者を発見できない車両につき、現在の所有者と購入者だけで所有権移転登録を可能とする措置を講じ、これを2020年6月30日まで適用するとしていましたが、この期限を2020年9月30日まで延長すると決定しました。なお、この期限を過ぎた後は、所有権移転には登録所有者の拇印を要求するとされています。
10.2020年7月3日の閣議結果(2020年7月3日 政府プレスリリース 05号)
2020年7月3日の閣議にて、「国有財産の管理・使用及び処分に関する法律案」及び「商業ギャンブルの管理に関する法律案」が協議され承認されました。また、本閣議においてフン・セン首相は次のように発言しました。
- 環境省・農業省・国土省・地方自治体は、各州の自然保護区内の土地を長期間占有・用益してきた国民に対して土地の所有権を与えること。
- バッタンバン州コアコロロー区の土地紛争につき、セン・トン氏が違法に侵害した土地はバッタンバン州が取り戻して管理し、経済的コンセッションとして国民に与えること。
- 反汚職ユニット(ACU)は上記業務を引続き担当することとし、国家・国民の土地を詐取した者は処罰するとともに人民党から除名する。また、悪意で発行された土地の権利証は無効とする。
- プノンペン市(ナガワールド)、シアヌークビル州、ポイペト市、バンティエイミンチェイ州、国境地域及びその他の地域のカジノの再開を認めるが、カジノ業者は保健省所定の措置を講じる旨の覚書を保健省(又は保健局)と締結しなければならない。
- プノンペン市及び各州の娯楽クラブ・KTVの再開を許可するが、業態をレストランに変更するとともに、保健省所定のCOVID-19防止措置を実施しなければならない。
- 各地方自治体は、COVID-19の影響を受けた貧困家庭・弱者の情報が真実であるかどうかアップデートしなければならない。政府支援金を受給するために自分の親戚等を貧困家庭・弱者であると偽った村長・町長・地区長等の役人に対しては処罰措置をとる。
11.国家社会保障基金(NSSF)ガイドブック
国家社会保障基金(NSSF)は、NSSFの給付内容及び給付手続を解説したガイドブック(クメール語版・英語版)を公表しました。
12.船舶がカンボジアに入港する際の書式及び手続に関する省令の書式改正(2020年7月6日 公共事業運輸省令 227号)
本省令は、船舶がカンボジアの港に入港する際に記入する書式(2019年7月15日付省令222号に添付されていたもの)を改正するものです。
13.プノンペン市内における広告規制(2020年7月6日 プノンペン市役所通知 番号なし)
プノンペン市はこれまでに何度も張り紙やチラシ配布等の禁止を指導してきましたが、いまだにこれらの行為が横行していることに鑑み、あらゆる組織・民間機関・教育機関・NGO・協会・会社などに対して、無秩序な張り紙、信号機付近でのチラシ配り、電柱・街路樹・壁等へのカードの貼り付け、ペインティング、音声広告、乗物広告、公道に傘を立てて行うSIMカードの配布などをすぐに中止するよう指示を出しました。そして関連当局に対して、これらの行為を行う者に対しては教育指導の実施や合意書へ署名させる等の措置を採るとともに、直らない場合は罰金・事業停止・裁判所への送致等の措置を採ることとされています。
14.シェムリアップ州における犬の売買・屠殺事業の禁止 (2020年7月6日 シェムリアップ州農林水産局通知 293号)
シェムリアップ農林水産局は、ここ数年で増加している犬の食用売買・屠殺事業は人道的・道徳的に問題であるだけでなく狂犬病その他の病気の蔓延にもつながり得るうえ、動物健康・動物生産法にも反するとして、許可なく犬を食用売買・屠殺する事業を行うことを禁止すると通知しました。
15.縫製業・観光業への政府手当支給(9回目、10回目、11回目、12回目)(2020年7月6日、8日、9日 労働職業訓練省通知 番号なし)
労働省は2020年4月17日付指導045号により雇用契約停止となった労働者に対する政府支援金手当の支給を決定し、2020年5月26日付通知でその支給手続を規定しました。その後、労働省は対象事業所ごとに支給実施の通知を出しており、7月9日の通知で12回目の通知となります。対象となる事業所は各通知にリストアップされています。内容はこれまでの通知と同様で以下の通りです。
2020年4月17日付の労働省指導045号に基づき雇用契約停止の許可を受けた縫製業・観光業の工場・企業(添付リストに記載)で勤務する労働者に対して、各工場・企業を通じて労働省に提供された各労働者の電話番号宛に、ウィング特殊銀行が政府支援金支給に関する通知を送信する。支援金はリエル通貨で支給する。
雇用契約停止の予定期間前に勤務再開となった場合に支援金を政府に返還する手間を省くため、21日から1か月の雇用停止となる者に対しては2回に分けて支給することとし、2ヶ月間の雇用停止となる者に対しては4回に分けて支給する。
ウィング特殊銀行から携帯電話への通知を受信してから10日以内に支援金を受領しなかった場合、ウィング特殊銀行は支援金を政府に返金する。支援金を受け取るためにはカンボジアIDとウィングからの通知を受信した携帯電話をもって最寄りのウィング代理店へ行くこと。なお、この支援金を受け取るためにウィング代理店に対してサービス費用を支払う必要はない。
ウィング特殊銀行から携帯電話への通知を受信していない労働者は、各工場・企業の事務担当へ連絡して詳細を確認すること。
16.プノンペン市内のカラオケ(KTV)及び娯楽クラブはレストランに業態変更することで再開を許可する(2020年7月7日 プノンペン市役所通知 065号))
プノンペン市は、2020年7月3日付閣議結果に関するプレスリリース05号を受けて、プノンペン市内の全てのカラオケ及び娯楽クラブに対して、レストランに業態変更することにより業務再開することを認めると通知しました。業務再開する際は下記の措置を採らなければなりません。
- プノンペン市のOne window service窓口で事業許可申請をする。
- 保健省によるCOVID-19抑制措置及び観光省による安全措置を厳格に実施する。
17.輸入税未払の車両に対する措置(2020年7月8日 関税消費税総局通知 番号なし)
関税消費税総局(GDCE)は、輸入税を支払わなかったために税関に一時保管されている車両の所有者に対して、本通知から60日以内に罰金を支払うよう通知しました。右ハンドルの車両については下記を満たすこととされています。
- 支払うべき関税・ペナルティ額の70%のデポジットを支払い、当局が認定したガレージでハンドルを左側に変更する。
- 30日以内にハンドル変更済みの車両を税関職員に見せ、残り30%の関税・ペナルティを支払い、車両登録に使用する税金領収書を受領する。
また、上記要件を満たさなかった場合はその車両は請求なき商品とみなされ、公共競売で売却され売却代金は国庫に入るとされています。
18.自然保護区における違法侵入・占有の防止(2020年7月8日 内務省レター 1963号)
2020年7月3日付閣議結果に関するプレスリリース05号を受けて、内務省は各州の知事に対して、自然保護区・森林地帯内の土地を長期間占有している国民に対して土地を付与したうえで10%の追加共用地を準備するとともに、これ以上の違法な土地占有の発生を防止すべく、以下のとおり指導しました。
- 自然保護区・森林地帯内の土地を長期間占有・用益している国民に土地を付与するとともに10%の追加共用地を準備するため、国民のデータ・統計の管理を慎重に行うこと。
- これ以上の違法占有が発生しないよう、自然保護区・森林地帯内の土地占有状態を追跡管理すること。これ以上の森林地帯及び国有地の違法占有は厳しく禁止し、行政的・法的な手段を厳格に講じること。
- 当局が実施する土地紛争解決に国民が協力し、この機会を利用して儲けようとするブローカー等の扇動に乗せられないようにするため、国民に対して土地占有の状態や行政の方針を説明すること。また、このような扇動的なブローカー等を防止するための措置を講じること。
- 係争地については、当事者と直接会って状況・請求内容を調査した上で、誠実かつ公正な和解をして解決すること。
- 市・群・町・地区の役所に対して、法律・書式・手続に従って適切に証明書の発行及び書面への署名を行うよう指導すること。法律に従わずに証明書の発行または書面への署名を行う者に対しては処分を講じること。
- 上記を実施する際は、各州は事柄に応じて国土省・環境省・及び農林水産省へ報告し、意見を求めること。